高齢者の不安症状に最も効果的な薬剤クラスは?

提供元:ケアネット

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公開日:2025/06/18

 

 不安とその障害は、高齢者で頻繁にみられる症状である。高齢者における精神薬理学的治療リスクを考慮すると、不安のマネジメントに関する臨床的意思決定は、入手可能な最も強力なエビデンスに基づき行われるべきである。カナダ・マックマスター大学のSarah E. Neil-Sztramko氏らは、高齢者における不安の薬物療法に関するエビデンスを包括的に統合するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。The Lancet. Psychiatry誌2025年6月号の報告。

 2024年4月23日までに公表された研究をMEDLINE、Cochrane Central、Embase、PsycINFO、CINAHLよりシステマティックに検索した。対象研究は、高齢者(60歳以上、平均年齢65歳以上またはこれらの基準を満たすサブグループ解析)における不安に対する薬物療法に関するランダム化比較試験とした。主要アウトカムは、不安症状の軽減、治療反応、寛解とした。連続変数は標準化平均差(SMD)、二値変数は絶対差とリスク比(RR)を算出した。バイアスリスクの評価にはCochrane Risk of Biasツール、エビデンスの確実性の評価にはGRADEを用いた。本研究の実施には、経験を有する人たちが関与した。

 主な結果は以下のとおり。

・適格研究19件、2,336例(女性:1,592例[68.15%]、男性:722例[30.91%]、性別不明:22例[0.94%])が特定された。
・人種または民族について報告した研究は8件のみ、大部分の対象は白人であった(1,428例中1,309例[91.6%])。性別に関するアウトカムを報告した研究はなかった。
・抗うつ薬使用群は、不安症状の軽減において、プラセボ群または待機リスト対照群と比較し、より効果的であった(SMD:−1.19、95%CI:−1.80〜−0.58)。エビデンスの確実性は中程度、異質性は顕著であった(I2=92.34%、p<0.0001)。
・抗うつ薬群は、治療反応または寛解においても、プラセボ群または待機リスト対照群と比較し、より効果的であった(相対リスク:1.52、95%CI:1.21〜1.90、絶対差:1,000人当たり146人、95%CI:59〜252)。エビデンスの確実性は低く、異質性も低かった(I2=8.09%、p=0.36)。
・計画されたサブグループ解析では、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SMD:−1.84、95%CI:−2.52〜−1.17)は、セロトニンノルエピネフリン再取り込み阻害薬(SMD:−0.46、95%CI:−0.65〜−0.27)と比較し、不安症状の軽減効果が大きかった。しかし、治療反応率または寛解率には差が認められなかった。
・ベンゾジアゼピン系薬剤使用群は、プラセボ群と比較し、不安症状を軽減する可能性はあるが、エビデンスの確実性は非常に不確実であり、バイアスリスクも高かった。
・主要アウトカムに関する他の薬剤クラスのメタ解析は実施できなかった。

 著者らは「抗うつ薬は、高齢者の不安症状軽減に対して効果的であり、安全性および忍容性を裏付けるエビデンスも認められた。一方、ベンゾジアゼピン系薬剤の有効性、安全性に関するエビデンスは弱かった」とし「これらの知見は、高齢者の不安症状治療において、エビデンスに基づく診療指針となりうる」としている。

(鷹野 敦夫)